【メイキング】乗り物を描いてみよう|トラックの描き方を線画から塗り方まで公開

キャラクターは描けても、背景がうまく描けないという方は少なくありません。

例えば、車などの乗り物が描ければ表現の幅が広がりますが、うまく描きたくても歪んでしまうといったことや形状が曖昧で車らしく見えないなどといったケースがよくあります。

その悩みはちょっとした下準備と違和感なく乗り物を描くための工程を踏めば、誰でもうまく描くことが可能です。

そこで今回はおだんご自身が描いたトラックやショベルカーのイラストを参考にして、乗り物をうまく描くための工程をご紹介していきます。

1.乗り物をうまく描けない理由

乗り物に限った話ではなく、絵がうまくなるにはうまくいかない理由を知り、それを解消することが大切です。

今回は車などの乗り物がテーマなので、乗り物をうまく描けない理由を整理していきましょう。

1-1.資料を参考にしない

乗り物でもちょっとした小物でも、形状がよく分からない物を想像でなんとなく描いてもなかなかうまくいきません。プロでも知らない物はうまく描けませんし、うまい人ほどあらゆる角度の資料を集めて参考にしている傾向があります。

資料を参考にするというのは決して悪いことではなく、むしろうまくなりたいならマストといっても良いほどなので、ジャンジャン資料を集めて参考にしましょう!

1-2.パースを意識していない

パースは背景やオブジェクトを描くうえで非常に重要な要素です。パースを意識していないと乗り物自体が歪むうえに一部だけ浮いて見えたりなど、強い違和感の原因にもなります。

また、パースは人物が違和感なく周りの風景の中で立たせるためにも必要なものなので、慣れが必要かもしれませんが、恐れずパースを引きまくって欲しいと思います。

2.乗り物をうまく描くための準備

車などの乗り物をうまく描けない理由が分かったら、それを潰していけばOKです。

というわけで、さっそくパースを引いて乗り物を描いていこう!と言いたいところですが、オブジェクトの形状が分からない場合はいきなり本番に入るのではなく、まずは準備をしましょう。

2-1.資料を集める

まずは、できる限り描きたい乗り物の形状が把握しやすい画像を集めましょう。

また、正面や側面、背面なども知ることができるように、様々な角度の画像を集めるのが理想です。

時間に余裕がないなら描きたい角度の画像1つだけでも構いませんが、1つの側面しか形状を知らない場合と、より詳しい形状を知っている場合とではリアリティや質に差が生じる可能性があります。

このためイラストを描く時はもちろんのこと、コンセプトデザインをしたい時はより物の形状や構造を知ることを大事にした方が良いと思います。

2-2.スケッチを描く

資料を集めたら、スケッチを描いてみましょう。参考までにおだんごが描いたスケッチをお見せしますが、正面や側面、背面や斜めなど、できるだけ様々な角度から形状を把握するようにするとグッドです。

スケッチでは物の形状を把握することを主な目的としているので、この段階ではパースはそこまで考えなくても大丈夫です。あくまでも、描くオブジェクトの形状を知ることに集中しましょう。

3.線画を描く

資料集めからスケッチまでを行って乗り物の形状を把握したら、いよいよ本番に入りましょう!

線画無しの厚塗りで描いていく方法もあるのですが、参考がガッツリ線画を描いたものなので、今回は線画をしっかり描く描き方をご紹介します。

3-1.パースに沿って線画を描く

最初に簡単なイメージを描き、それに沿ってパースを引きます。イメージがなかなか汚いですが、「描きたいイラストのイメージが固まれば良いや」という気持ちでシャシャーっと描いたものなのでご了承ください。

イメージをつかむために簡単なラフを描きます。
水平線を決め、パースを引いていきます。

パースを引いたらそれに沿ってトラックの下絵を描きます。この段階では大体の形状を描き、全体のバランスを見て大きさの調整もしました。

次に、トラックの線画を描いていきます。模様やホイールなどの細かい部分は塗りながら詰めていけば良いと考えたので、この段階ではトラックの形状の主な部分に線入れをしています。

ショベルカーもトラックと同様にパースに沿って大体の形状を描き、線入れをしていきます。

ショベルカーはトラックの後ろにズラッと並べた時に、ショベルの角度にいくらか違いがあった方がリアリティが出るかなと思い、後々動かせるように各パーツに分けて線入れをしていきました。

しかし、このせいで実際にズラッと並べた時にレイヤーがやたら多くなるし、要らない線はチマチマ消さなければいけない羽目になるなど超面倒なことになったので、ここまでこだわらずにさっさとコピペして並べて描けば良かったのかなとも思っています。

まぁ、やってみたからこそ分かることもあるので良しとしましょう!

4.色を塗る

乗り物の線画が終わったら、いよいよ色を塗っていきます。この段階に入るとどんどん絵が出来上がっていくので、個人的にかなり楽しい工程です。

4-1.色を決めていく

全体のバランスを見ながら色を決めていきます。この時に背景も詰めていきました。

背景は厚塗りでダイレクトに描き込んでいけば良いと考えたので、線画は引かずにラフしか描いていません。

4-2.光と影を描く

色が決まったら光が入ってくる角度を決めて、光の当たり方と影を決めていきます。

今回は上空から施設の中へ光が入り込んでくる構図なので、そのつもりで最初に空を簡単に描き、光の具合を確かめてから乗り物の影やアスファルトに落ちる影を決めていきました。

4-3.細部を描きこんでいく

色と光が決まったら、後はガンガン描きこんでいくだけです。この時に一つの部分だけに集中して描くと飽きるし、細かく描かなくても良い遠景を必要以上に描きこんでしまうと、バランスをとるために前景や乗り物も不必要に描きこまなくてはならなくなります。

そのため、全体のバランスを見ながら背景の描きこみと乗り物の影や照り返し、車体の模様といった描きこみなどを同時進行で行いました。

トラックの影や模様を詰めつつ、遠景も整えていきます。背景でしっくりこなかった部分は、この段階で大幅に変更しています。
トラックのライトや窓の照り返しなど、ディテールを詰めていきます。

画面全体の大枠が描きあがったら、ショベルカーの細かいパーツや人物の描きこみも進めていきます。

ワイヤーなどの細かい部分や金属部分の反射や影なども書き加えることで、
イラストのリアリティが増します。人物のディテールもさらに詰めていきます。

全体的に細部まで描きこんでしまうと画面がゴチャついてどこを見せたいのか分からない絵になってしまうため、抜くべきところは適度に抜いていますが、描くべき部分はしっかり描けるかどうかが絵の質を決めると思うので、手は抜かないようにしています。

メリハリと手抜きは全く違うというのがおだんごの考え方で、抜くべき部分も然るべき理由があってこそ抜くものだと思っています。

5.仕上げ

最後に光を入れたり色味を調整するなどして、絵を仕上げていきます。

5-1.テクスチャや光を追加する

アスファルトにテクスチャを追加し、施設内に灯っている光も追加します。また、施設内の光による車体の照り返しなども入れています。

テクスチャは汚れの写真を張り付け、光は入れすぎない程度にオーバーレイや加算で入れています。

今回はこの汚れのテクスチャを選びました。
アスファルト部分に、 テクスチャをパースに沿って変形して貼り付けています。

5-2.色味を調整する

最後にトーンカーブで締めるところを締め、明るい部分にもほんの少し光を足してメリハリをつけています。トーンカーブなどによる調整はやり過ぎると加工感が出てしまうので、触るとしてもほんの少しだけです。

さらに空気感を表現するため、スクリーンで淡い青を入れています。

おだんごはコンピューターによる援助がなくても明度や彩度の絶妙なコントロールだけで光を表現したターナーやレンブラント、モネなどの巨匠を尊敬しているので、基本的には最後の調整がいらないくらいに色や光をコントロールできるようになるのが理想です。

なかなか難しいものですが、あれほどのレベルで表現できるようになれば、絵を描くのも相当楽しくなるのでしょうね。

6.まとめ

乗り物を描きたくても上手くいかないと悩んでいる方は、今回ご紹介したように資料を集めてスケッチを描いてみることと、パースを意識してみてください。

パースは使いこなすのに慣れが必要かもしれませんが、おだんご自身も修行中の身であり、あれこれ悩みながら試行錯誤しつつ描いています。

自分の頭で考えて試してみたことは必ず自分の画力として積み上がっていくので、一緒に頑張っていきましょう!