私は少しの臭いでも気になる質なので、化粧品売り場の臭いは苦手だし、もちろん香水も苦手でした。でもそれがどうしたことか、去年の夏頃から急に香水に興味が出始めました。正確には興味が出たというよりも、自分の砦が欲しくなったという方が正しいかもしれません。
生きていると、どうしてもどこかで人と関わる必要があります。誰もいない山奥や孤島にこもって仙人みたいな生き方をすれば、誰にも関わらずに済むかもしれません。しかし実際はそうはいきませんし、そこまでしたいとも思っていません。そうすると、本当は嫌だけど相手に合わせることもあるし、時には無神経な人に土足で踏み込まれることもあります。 だからせめて、自分だけが分かる自分のための砦が欲しいと思いました。私にとって香水は、香りのATフィールドといったところかもしれません。
ただ、私はフレグランスについてはド素人なので、どのような香りが自分に合うのか全く分かりません。皆目見当もつかん。ハイブランドからニッチフレグランス、ロフトなどにある比較的リーズナブルなものまでいくらか調べてみましたが、なんかよく分かりません。
バニラとかムスクは分かりますが、ベンゾインとかパチョリとか魔法薬の材料みたいな名前が並んでいる・・・。香水を使い慣れているフレグランスマスター達は、羅列されるこの材料達が理解でき、香りも想像できるのでしょうか。さらに、香水の説明がやたら詩的というか文学的というか、これで香りの検討がつく人は凄いです。
ロフトなどで色々と香りを嗅いでみましたが、好みの香りが見つかる前に鼻がバカになって、もはや香りの判別ができなくなる始末。
自分に合う香水探しはいきなり難航しましたが、迷走した甲斐あって1つの面白い香水に辿り着きました。
それはダウンパフューム(DOWN Perfume)というブランドの香水で、その名も『フォーミュラX』。何かのタイトルか技名のようで、なかなかにそそります。名前もさることながら、この香水の性質がまた独特で面白いです。
フォーミュラXはつける人によって香りが変わる香水で、その香りによってスキンタイプも分かるようです。人の肌にはいくつかのタイプがあり、大きく分けて以下の4つに分類できます。
1.スウィート
肌が甘い香りがする。グルマン系(お菓子とか、そんな意味らしいです)やバニラなどの甘い香りが強く出過ぎてしまったり、柑橘系の香りはすぐに消えてしまう傾向がある。フルーティー系やスパイス系などが比較的得意。
2.ムスキー
肌が石鹸のような香りがする。肌がムスク系のため、香りの持続時間が長くなりやすく、メンズ香水やムスクやアンバーなどのアニマリックな香りが強くなりやすい。スズランといった白い花や、シーソルトなどの透明感がある香りは相性が良い。
3.ニュートラル
肌に香りがなく、ムエット通りに香水が香る。
4.ウッディー
肌がお香やグリーン系の香りがする。どの香水も肌にのせるとガラッと香りが変わりやすい個性派。肌自体がサンダルウッドのような香りがするので、フルーティー系やグルマン系、スパイシーな香りなどが合いやすい。
日本人の8割ほどはスウィートかムスキーで、欧米人はウッディーが多いらしいです。上に挙げたようにスキンタイプによって合う香りが違うので、フォーミュラXをつけた時の香りが分かれば、自分に合う香水を探しやすくなるはず!
早速アトマイザーを購入し、紙にワンプッシュしてフォーミュラXそのものの香りを嗅いでみると、石鹸にふんわりお香を足した感じ?今まで嗅いだことがない独特の香りがします。
何はともあれ手首にワンプッシュしてみると、メチャクチャお香の香りがする!まさにお寺の香りです。そこに少し石鹸のような香りがします。正直、苦手な香りだ・・・。フォーミュラXは自分の体臭をもとにした香りだから良い香りに感じると商品説明にありましたが、自分の香りが苦手とはどういうことでしょう。とりあえず、耐えられない香りなので石鹸で洗い落としました。パッとしない香水デビューですが、自分のスキンタイプを知ることが主な目的なのでOKです。ちなみに友人は肌につけても特に香りが変わらず、フォーミュラXそのままの香りでした。人によってこんなにも香り立ちが違うとは驚きです。
この結果から、おそらく私の肌はウッディーがベースで、ムスクが混じっているのではないかと思います。素人判断で正確なことはいえないので、スキンタイプはふんわりした参考程度にして、自分に合うフレグランスを探す旅に出ることにしました。 この時はすぐに自分に合う香りに出会えるだろうと楽観的に考えており、多くの香水をアレコレ試すことになるとは夢にも思いませんでした。