ニコライ「フィグティーと他6種の香水」|ゲランの血をひくサラブレッドが生み出す上品な香り

ニコライはゲランの血を引く女性調香師であるパトリシア・ド・ニコライ氏が創設したフレグランスブランドです。どういったブランドかはノーズショップさんを参照してもらうととても分かりやすいのですが、ざっくりいうと秘密にされてきた調香の全工程を公開したことで調香師の専門性が公になり、調香師の職業としての社会的地位が向上するとともに「男性の職である」という性別の壁も取り払ったという功績があります。

ニコライにはアンタンスというパフュームにあたる香りとオードトワレが主にあるのですが、ここでは私が実際に試した7つの香水をレビューしていきます。

私が実際に試した7つの香水をレビューしていきます。

「フィグティー」★☆☆☆☆

フィグといいながらフィグを使っていない、ひねりが効いた面白いオードトワレです。その面白さとフィグにオレンジ、ジャスミンにマテ茶という華やかでありながら爽やかな香りを想像させる構成のおかげか、ニコライの中でもかなりの人気を誇ります。

トップ|オスマンサス、オレンジ
ボディ|ジャスミン、ダバナ、コリアンダー
ベース|マテ茶、ユソウボク、アンバー

私自身もこのいかにも良い香りがしそうな構成はとても気になりました。しかし、土の匂いを思わせるアーシーにバニラのような香りを持ったユソウボクと、独特の香りがカメムシの匂いにも似ているといわれるコリアンダーが入っているのがひっかかる・・・。しかし、It香水となれば試してみないわけにはいきません!

さっそくムエットを取り寄せて試してみたところ、くせのない清潔な香りで好印象でした。スッキリと優しい香り立ちでTPOを問わない香りだと感じたので、確かにこれは人気が出るのも納得です。

ならば肌ならどうだと手首にワンプッシュしてみると、・・・あれ?ものすごいキュウリみたいな匂いがする。さっきまでの洗い立ての服の様な清潔な香りはどこへ?ここはいつからキュウリ畑になったんだい?

おそらく、私の肌に乗ったとたんにボディのコリアンダーと、ベースのユソウボクが暴れ出したのではないかと推測しています。だって、ユソウボクの土の香りとコリアンダーの青い独特の香りでしょ?それ、キュウリ畑じゃん。

残念ながらフィグ感は全くなく、時間がたつほど強烈なキュウリ臭になってしまいました。It香水だからといって自分に合うわけではないと改めて痛感。残念です。

It香水といわれるほどに人気を博しているわけですから、合えばきっと透明感のあるとても素敵な香りになると思います。

「アンジェリーズペア―」★☆☆☆☆

アンジェリーズペア―は正直あまり印象に残っていないのですが、合わなかったのは覚えています。ペア―の濃厚な甘さが香ったあと、なんともいえない臭い香りになってしまったんですよね。家族が臭いといってきたから間違いないです。

トップ|ベルガモット、レモン、刈り取られた草、ブラックカラント
ボディ|ペアー、ジャスミン、ローズ
ベース|パチョリ、オークモス、ムスク

嫌な臭いになってしまった原因はおそらく、私の肌に乗った瞬間に刈られた草とオークモスが暴れて香りのバランスが崩れたのではないかと思います。だって、ベルガモットとレモンとブラックカラントとペア―、それにジャスミンとローズですよ?うまく香ればそれはもう良い香りでしょう。

「ローズロワイヤル」★★★★☆

これはムエットを嗅いだ瞬間に「ええローズや!!」と言ってしまったので、迷いなくアトマイザーを購入しました。コリアンダーとユソウボク、そして爆弾になりやすいサンダルウッドが入っていることに若干の不安を感じつつ、さっそくお試しです。

トップ|ブラックカラントの芽、パッションフルーツ、ベルガモット
ボディ|ローズ、コリアンダー、アンブレット
ベース|イモーテル、サンダルウッド、ユソウボク、ムスク

手首にワンプッシュした瞬間、ローズとパッションフルーツの甘酸っぱい良い香りが広がります。まさに生のローズ!庭に咲いているローズを直接かいでいるかのよう。素敵です。パウダリーが全くないのも好印象。ケルゾンの超人気香水であるヴォージュ広場は強烈なパウダリー臭でギブアップしてしまったので、これはかなりいいローズですぞ!

ただ、ローズが好きじゃない人も多いので、外出時につけるよりも寝香水にした方がよさそうです。

香水はトップからラストまででガラリと香りが変わるものも珍しくありませんが、このローズロワイヤルはトップからラストまで一貫してローズです。ただ、パッションフルーツやブラックカラントのフルーティーさが抜けていくとひたすら酸っぱい香りになり、まるで梅干しみたいな酸っぱい香りになってしまいました。まぁブラックカラント(カシス)もパッションフルーツも酸っぱいフルーツですし、ローズにも酸っぱい感じはありますからね。酸味に酸味を加えまくったら、そりゃかなり酸っぱくなります。

そこを良い香りに仕上げているのがニコライの力量の凄さなのですが、ラストノートは体調が万全じゃないと、いや、万全であってもしんどかったです。さすがにこの酸っぱさは人がつけるものじゃないと感じてしまいました。

トップからミドルまでがフルーティーな上質なローズで、寝香水にするとワンランク上の眠りを誘ってくれそうな香りだったので、ラストまでこの調子で走り抜けて欲しかったです。

「ジュストアンレーヴ」★☆☆☆☆

ピーチにココナッツ、ジャスミンにバニラなど、夢のような香りがしそうなジュストアンレーヴ。構成が非常に魅力的です。

トップ|ピーチ、ココナッツ
ボディ|ジャスミン、イランイラン、チュベローズ
ベース|サンダルウッド、バニラ

しかし手首にワンプッシュしてみると、なぜかピーチもココナッツも感じない。あれ、トップノートが無かったことになってない?もっというといつまでたってもあまり香らないうえに、手首が何となく酸っぱくてパウダリーになるという不思議な状態になってしまいました。こんなに香りがどこかに飛んでしまうのは初めてかもしれません。

合わなかったんだと思いますが、ぜひとも夢のような香りを楽しんでみたかったなぁ。

「キスミーアンタンス」★★★☆☆

キスミーアンタンスはパトリシア氏の幼少時代の思い出を詰め込んだ香りです。彼女が大好きだったアーモンド菓子のドラジェとバカンスを思い出す日焼け止めクリーム、そこにジャスミンやイランイラン、オレンジフラワーなどのフローラルブーケを添えています。

ニコライ創業者の良き思い出をいっぱい詰め込んだ香り、はたしてどのような香りでしょうか。

トップ|ビターアーモンド、レモン、アニス
ボディ|ヘリオトロープ、ジャスミン、イランイラン、オレンジフラワー、クローブ、シナモン
ベース|バニラ、オポパナクス、ムスク

手首にワンプッシュするとお菓子のような甘さがきて、その後すぐにユリのような白い花が香りました。その後は花の香りがきつくなってきて少ししんどかったものの、だんだんとバナナのような香りに移行。おそらくジャスミンの香りです。その後はバニラも加わってグルマン系を思わせるぜいたくな香りになりました。

試しにお腹につけてみると、ワンプッシュした瞬間はユリのような香りが強烈になったものの、体温が高い部分のおかげでバニラが香りやすかったのか、すぐに花の香りは和らいでバナナのようなグルマンな香りが続きました。

これ一つでフローラルブーケからグルマンまで楽しめる、なんとも贅沢で華やかな香水です。素晴らしい。アンタンスシリーズ(おそらくオードパルファムに相当)だけあって香りは強めなので、付ける量はワンプッシュで十分です。夏など熱い日はそれでも多いかもしれません。本当に少しでしっかり香ります。つける場所も気候やつける人の体温によりますが、濃厚に香るのが心配な場合は手首やお腹は避けて、下半身にした方が良さそうです。

以上のことから、夏よりは秋冬の方がつけやすそうだと感じました。

「ムスクアンタンス」★★☆☆☆

ムスクアンタンスはあまり覚えていないのですが、ペア―の濃厚な甘さにローズやジャスミンなどといった花の濃厚な香りが加わって、濃厚な花の蜜をつけているようだと記憶しています。我慢してつけたままでいるとだんだん化粧臭といいますか、化粧品売り場のような香りが加わってきて、年齢高めな香りになったと思います。

「私香水つけてるんですよ!」とアピールしたいなら良いですが、個人的には避けたい香りです。

トップ|ペアー、ガルバナム
ボディ|ローズ、バイオレット、カーネーション、ジャスミン
ベース|ムスク、アンバー、シベット、サンダルウッド

「ローズピヴォワンヌ」★★★☆☆

ローズピヴォワンヌはラズベリーの香りが欲しくて探している時に出会ったオードトワレです。大好きなラズベリーにブラックカラント(カシス)まで加わるなんて、あの甘酸っぱい芳醇な香りを楽しめるのかと心が躍りました。

トップ|アンブレット、ラズベリー、ブラックカラント、ベルガモット
ボディ|ローズ、ゼラニウム、バイオレット、ピオニー、アイリス、ブラックペッパー
ベース|サンダルウッド、インセンス、ムスク

期待MAXで手首にワンプッシュしてみると、フルーティーな良い香りがしました。そこからすぐに落ち着いた香りへ移行。ラズベリーやブラックカラントは正直分からんです。やさしーく香っているような気はするのですが、違う違う違う、そうじゃない。もっとしっかりラズベリーを感じたかったよ。

名前に「ローズ」とありますが、ゼラニウムやピオニーなどが効いているせいか、そんなにローズじゃありません。ローズロワイヤルと比べると、正直ローズがどこにあるのか分からないくらいです。逆に、あまりにもバラな香りは好きじゃないという方は使いやすいかもしれません。

総評として悪くないのですが、全体的にありきたりな香りだと思いました。あまり癖はなく万人受けしそうな香りではあるので、普段使いとしてはありだと思います。ただ、値段のわりには普通なので、ここぞという時のオシャレ用でもないし、普段使い用にここまで高いお金を出すほどでもないような?でも、なかったらなかったで寂しくなりそうな不思議な香りです。

まとめ

ニコライの香水を7つ試したところ、全体的にきれいで上品な香りでした。メゾンフレグランスには尖りまくって人を選びまくる香りや、これどこでつけるねんといった超個性派の香りもありますが、ニコライは日常に沿いながらワンランクアップした自分を演出してくれそうな香りです。どちらかというと優等生な香りで、「オンリーワンだぜ」みたいな尖った個性は感じませんでした。上質ではあるものの、どこかで嗅いだことがあるなーと思う香りが多かった印象です。

ラズベリーが好きなので「プードル ドゥ ムスクアンタンス」が気になっているのですが、ムエットが酸っぱくてパウダリーに感じたので、今回のレビューのように微妙な結果に終わる予感。おそらく試さないだろうと思います。

「プードル ドゥ ムスクアンタンス」よりはSTEP ABOARD(ステップアボード)のメンタ・スィ・ナビーレの方がいいかも。あれはミントにラズベリー、カラントにウォーターメロンという好きなものしか入っていないうえに、ベースはムスクだけで地雷になりやすいサンダルウッドやアンバー、トンカマメなどが入っていない神構成です。ただ、アトマイザーがないみたいなので試すのが難しい。どうしたものか。

少し話が逸れました。個人的にニコライにピンとくる香りはなさそうですが、上質な香りを探している方は試す価値があるブランドです。