デザインのためのレンダリングを学んだ参考書「HOW TO RENDER」

前回は私がコンセプトデザインのスキルアップのために使った参考書のうちの1つである、「HOW TO DRAW」についてご紹介しました。「HOW TO DRAW」は世界観やプロダクトデザインを伝えるために必要なパースや構図、製図などを学んだ参考書です。そして今回ご紹介する「HOW TO RENDER」は、デザインに質感や存在感を与えるレンダリングを学ぶものです。

レンダリングは製図やパースなどといったデザインの土台がしっかりしているからこそ真価を発揮するものです。そうでないと、塗りでいろいろごまかした絵になりかねません。

それに本書では「HOW TO DRAW」で描いた製図を使う場面がけっこうあります。そのため、「HOW TO DRAW」で学んだことが身に付いていないと、しっかり内容を理解してレンダリングすることはちょっと難しいんじゃないかなぁと思います。

以上のことから、製図のスキルがすでにある場合はそんなに問題なさそうですが、そうでない場合は「HOW TO DRAW」を学んでから「HOW TO RENDER」に進むことをおすすめします。

それでは前置きはこれくらいにしておいて、サクッと「HOW TO RENDER」の内容をご紹介していきます。

1.光のタイプや影について学ぶ

本書では最初に太陽光や人工的なライトの拡散方法を学びます。光源が太陽光なのか、それとも人工的なライトかというだけで光の落ち方が全く違うため、影の描き方も全く違うものになります。そのことを理解したうえで、それぞれのライトが当たった時にオブジェクトに落ちる影や、オブジェクトからのびる影を描きながら学んでいきます。

裏面にも描いたものが写ってる・・・汚くてすみません。

一見簡単なように見えますが、複雑な建物や町などとなると結構難しいです。窓枠から落ちる影とかオブジェクトの裏側にまわる影とか、実際に街並みをデザインしていると「は?」ってなる部分がけっこうありそうです。練習あるのみ。

2.曲面や幾何学や複雑な立体のレンダリングを学ぶ

以下のサンプルは「HOW TO DRAW」の演習で描いたオブジェクトです。これらを利用して曲面や幾何学など複雑な立体のレンダリングを学びます。製図の曲線の頂点、つまり太陽光と面が接点になって影が最も暗くなる部分や、影が落ちる位置や長さ、形が把握しやすくなります。このことから、土台となる製図の力が非常に重要なことが分かると思います。

この章で学んだことを総動員してレンダリングしたのが以下のサンプルです。

これも裏の文字が見えてる・・・気にしないでください。

恥ずかしながら、お世辞にもうまいとはいえない仕上がりです。しかし明暗の把握とレンダリングは基本中の基本なので、これも精進あるのみです。

3.乗り物やキャラクターなどオブジェクトのレンダリングを学ぶ

ここまできたら、いよいよ乗り物やキャラクターなどのレンダリングを学びます。

車は各パーツのパスをきってレンダリングしました。どこをどうやってパスをきればいいか、慣れないので苦労したし時間もかかりましたね。しかしマスターしたら金属特有のパキッとした面や反射などのレンダリングがかなり楽になりそうです。それに様々なオブジェクトのレンダリングに応用できそうなので、これはぜひマスターしたいところです。

ロボットやウサギはパスはきらずに、下書きが見えなくなるまで地道にレンダリングしています。この明暗をレンダリングした絵をもとに、赤や青などを入れてみました。色を変更するだけなのでメッチャ楽にいろんな色彩パターンが作れます。グリザイユ画法ってやつですかね。これはオーバーレイで色を重ねるのではなく、調整レイヤーで色相をいじっています。

4.様々な反射について学ぶ

リアルなレンダリングに欠かせない明度や色、フレネル効果について学びます。環境の反射はサーフェスの向きが視界から逸れるにつれて強くなっていきます。この反射の強さの変化でフォームを表現するのは、かなりポピュラーなレンダリング手法です。3DCGソフトではフレネル効果という項目になっています。

以下のサンプルがフレネル効果を説明したものですが、左下の画像は実は、黒のベタ塗りの円にフレネル効果を加えて描いたものです。どうでしょうか?本物のような黒い球に見えるでしょうか(そうだといいな)?このことからも、フレネル効果はオブジェクトを表現するのにかなり強力なツールであることが分かりますね。

次の赤い物体と車は、天井に照明があって周りに白い壁がある屋内を想定して描いたものです。この場合は照明の反射だけでなく、周りの壁や床からの反射も考える必要がありました。オブジェクトの凹凸も考慮して反射を描かないといけないので、慣れないとなかなか大変です。

次の2つの乗り物は晴れた屋外のシーンを想定しています。最初に乗り物の明暗を描きこんで色を付けて土台を作ったら、クロム(乗り物の素材)を想定して地上や空の反射などフレネル効果を考慮して描きこんでいます。さらに太陽光が強く反射している部分や機体の一部が映り込む鏡面反射なども描いています。

チュートリアルに従っているからまだ描けますが、自分で考えたデザインをレンダリングする時は相当注意しないと、いろいろすっぽ抜けそう。まぁ、すっぽ抜けるということは身に付いていないということですから、練習するしかありません。

次は目が並んでちょいと気持ち悪いですが、光源の強い反射だけでなく人物や背景などといった環境の反射やフレネル効果も追加すると、リアルな目をレンダリングできるようになります。

カーボンファイバーや剥がれや錆といったウェザリングについても、本書は触れています。

カーボンファイバーは素材のレンダリングとクロム反射、空や地面の反射など、考えることが多くて自分の描いたデータを何回見返してもなんだっけ?になってしまいます。まぁ、落ち着いてやれば大丈夫でしょう、たぶん!

7.まとめ

1章から6章までにご紹介したことを総動員して、チュートリアル通りに作画したのが以下の3つのサンプル達です。

本書を一通りやって動画を参考にすれば、きっとこれくらいは描けます。

大事なのはチュートリアルそっくりに描けることではなく、学んだことを自分の絵に落とし込むことです。そのためには手を動かして練習を積み重ね、しっかり自分の力として定着させることが大事です。これはもうほぼ自分に対して言ってるようなもんです。ほんと、メッチャ自分の肝に銘じます。

「HOW TO RENDER」にはご紹介した内容の他にも、フォトリファレンスや水の表現、プロの方達の描き方など多くの知識が詰め込まれています。今回は割愛したので、ぜひ本書を参考にしてみてください。

また、前回ご紹介した「HOW TO DRAW」と今回ご紹介した「HOW TO RENDER」さえマスターすれば、絵を描くために必要な知識を網羅できるわけではありません。

学べることは星の数ほどありますし、トレンドや技術の発展に応じてアップデートやインプットをし続ける必要があります。とはいえ、一気に詰め込むのは無理だし、焦っても仕方ないのかなと思います。

自分が使いたいツールや表現したい絵に応じて知識と技術のインプットとアップデートをし、実際に描く。それを繰り返していくしかありません。

死ぬまで第一線かつ生涯うまくなり続ける人というのは、これが習慣的にできる人だと思います。自分ももっとうまくなりたいので、死ぬまで精進です。